■ あの頃、本当にオフィスはいらなくなると思っていた
2020年、コロナで世の中が一気に止まった頃。
会社に行かなくても仕事ができることを、初めて知った人は多かったと思う。
Zoomが一気に普及して、会議も商談も自宅からできるようになった。
当時はかなり本気で、
「もうオフィスはいらないんじゃないか」
「東京に住む必要もなくなる」
「これからは地方に住みながら働く時代だ」
という話が出ていた。
実際、2020年4月の東京都では、正社員のテレワーク実施率が49.1%まで上がった。
つまり、およそ2人に1人がテレワークをしていたことになる。
あの状況だけを見れば、「オフィス不要論」が出てくるのも自然だったと思う。
でも、6年経った今。
東京の街を見ると、少し違う景色になっている。
■ テレワークは消えなかった。でも主役にもならなかった
2026年7月時点のテレワーク実施率は、正社員で21.4%。
2022年以降、緩やかな減少傾向が続いている。
一方で、テレワーク経験者のうち、今後も続けたいと答えた人は81.6%。
働く側には、今でもかなり強い需要がある。
面白いのはここだと思う。
テレワークそのものは定着した。
でも、
「全員がずっと自宅で働く社会」
にはならなかった。
むしろ企業側では、「原則出社」という方針が2年連続で増えている。
コロナ当時に想像されていた未来とは、少し違った。
■ なぜオフィスは消えなかったのか
たぶん、仕事というのは思っていた以上に「情報」だけでは完結しなかったんだと思う。
資料を作る。
メールを返す。
オンライン会議をする。
ここだけ切り取れば、確かに自宅で十分だ。
でも実際の会社では、その前後にある雑談や相談、ちょっとした確認、新人教育、偶然の会話がかなり大きい。
「これ、どう思う?」
と隣の人に30秒聞けば終わることでも、オンラインだと会議を設定したり、メッセージを送ったりする必要がある。
一つ一つは小さいけれど、会社全体ではこの積み重ねが意外と大きい。
だから企業は、
「テレワークは便利」
ということを知った一方で、
「全部テレワークにすれば効率的」
でもないことを学んだんだと思う。
■ ただし、コロナ前に完全に戻ったわけでもない
ここも重要だ。
テレワークが減っているからといって、コロナ前の働き方に戻ったわけではない。
国土交通省の2025年度調査でも、直近1年間にテレワークを実施した人は全国で16.8%。
コロナ後の減少が続いていたものの、2025年度には増加へ転じ、安定基調に入ったとしている。
そして東京都では、2026年時点でもテレワーク実施率が35.5%ある。
つまり東京では、3人に1人以上が今でも何らかの形でテレワークをしている。
これは十分大きな変化だと思う。
オフィスがなくなったわけではない。
でも、
「毎日、全員が朝9時に同じ場所へ集まる」
という常識は確実に弱くなった。
■ 結局、勝ったのは「どちらか」ではなかった
2020年当時は、
オフィスか、自宅か。
東京か、地方か。
出社か、テレワークか。
という二択で語られることが多かった。
でも6年経って残ったのは、その中間だった。
集中したい日は家で働く。
人と話したい日は会社へ行く。
会議や教育、企画は対面。
一人でできる作業は自宅。
そんな使い分けだ。
だから「オフィス不要論」は外れたとも言える。
ただし、テレワークそのものが失敗したわけでもない。
むしろコロナによって、
「会社に行かなくてもできる仕事」と
「会社に行った方がうまくいく仕事」
が初めて分けて考えられるようになった。
これが一番大きな変化だったんじゃないかと思う。
未来予測というのは、極端な形ではなかなか当たらない。
コロナ禍のオフィス不要論も、たぶんその一つだったんだと思う。
でも、その予測の中に入っていた変化そのものは、案外しっかり残る。
